横浜国立大学社会科学系同窓会

富丘会活動・報告

2013/11/09

ホームカミングデーレポート(2) HCD記念講演

「未来社会づくりに挑む科学技術イノベーション」 科学技術振興機構顧問 相澤益男氏

(以下はHCD記念講演「未来社会づくりに挑む科学技術イノベーション」の富丘会報用の報告を執筆した岩丸陽一氏(理事、広報委員)の原稿を抜粋したものです。報告全文は富丘会報年末・年始号に掲載されますので、ご一読ください。)

講師プロフィール
1966年横浜国立大学工学部電気化学科卒業。1971年東京工業大学大学院博士課程終了。専門は生物電気化学。2001〜2007年東京工業大学学長、2007〜2013年内閣府総合科学技術会議議員。

HCD記念講演「未来社会づくりに挑む科学技術イノベーション」で、相澤先生から以下の内容のお話がありました。

実現したい未来

未来社会を考えるとき、「何を実現したいのか」をはっきりさせておきたい。「エネルギー・資源の制約」「少子化、高齢化」「気候変動・自然災害」など解決すべき課題は多いが、まずこうした難問を前に、未来を切り開くために欠かすことのできないものがイノベーション、人材育成、科学技術であり、その融合である。

社会のあらゆる面で国内・海外の距離が狭まり、その壁が低くなる中で、大学のグローバル化が求められるようになった。世界の大学ランキングのトップ100でみると、圧倒的な存在感をみせるのが半数以上を占める米国だ。次いで英国、欧州各国が続く。アジアでも中国(香港)、シンガポール、韓国などの健闘に比較して日本の大学は厳しい。グローバル大学ともいえるトップレベルの大学の学長たちは「世界最高の研究、教育プログラムを提供することが使命であり、それによって世界の優れた学生から選ばれる」と声をそろえている。

いまや高等教育のグローバル化は進み、全世界の留学生数は1990年の130万人が2010年には417万人へと急増した。国立大学にも影響はおよび、「学生を選ぶ」から「学生に選ばれる」状況になった。当然の帰結として、目指すべきところは「質の向上」以外にない。それぞれの大学は、その特性を明確にしたビジョン、戦略により、グローバル大学への道を歩むのみだ。こうした流れの中で、横浜国立大学には、
1.教育においても、研究においても世界を惹きつけるExcellenceの持続的な創出
2.グローバル人材の育成を目指した教育イノベーション
3.グローバル時代に相応しい新化を続け、伝統をさらに輝かせること
を期待したい。

競うべきは科学技術のGlobal Excellence

その際、モデルにしたいのは短期間でノーベル医学・生理学賞受賞に至った山中伸弥京大教授だ。従来の考えを覆して飛躍的な「知」を創造したことと、再生医療・創薬に大きな道を開いた、その波及効果、人類社会への貢献の大きさが評価された。グローバル・エクセレンスの創造である。これを持続的に粘り強く、若手や女性の挑戦的な研究を支援することで実現させる、いわば総力戦が必要になる。

日本は具体的には3つの政策が打ち出されている。第1が最先端研究開発支援プログラム(FIRST)。世界をリードする研究者30人に、5年間で総額1000億円を集中投資する。第2が世界トップレベル研究拠点(WPI)。基礎研究拠点に世界の頭脳を引き付け、異分野の融合により新しい科学の創出をめざす。第3が大規模研究施設。世界最短波長のX線自由電子レーザーのSACLA、スーパーコンピューターの京など、世界に比類のないエクセレンスで、やはり世界の英知を呼び込むハブにしようという政策だ。

社会的課題の解決に挑む科学技術イノベーション

「イノベーション創出力」を国別に数値化したGIIランキングをみると、1位がスイス、以下スウェーデン、シンガポール、フィンランドの順で並んでいる。GDPトップの米国はGIIが10位、2位の中国が34位、3位の日本は25位である。

イノベーション強国ともいえる、こうしたGII上位国に特徴的な要素は「制約・課題への果敢な挑戦」「世界を引き付けるGlobal Excellence」「世界を引き込むイノベーション創出環境」----の3つだ。問題解決を自国だけで進めるのでなく、最初から世界に目を向け、その一部または多くを外国にも頼る。同時にその英知を自国に引き込み、飛躍につなげようとする姿勢だ。知の囲い込みが比較優位を実現するのではなく、逆にオープン化することでイノベーションは促進される。

私たち1人1人が未来社会をどう作っていくか、そのために科学技術イノベーションがどのように貢献できるか、その根幹ともいえる人作りはどうなるか、楽しみにしていきたい。

以上

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