横浜国立大学社会科学系同窓会

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2016/05/07

第89回富丘会総会特別企画―講演者によるカウントダウン・コラム第二回

<アベノミクスの3年をどう評価するか>



河野龍太郎(87済:BNPパリバ証券チーフエコノミスト)

アベノミクスの最大の成果は、積極的な金融緩和による円安誘導で株高をもたらしたことですが、実体経済を見ると過去3年間の平均成長率はわずか0.7%です。多少成長したのは2013年だけで、2014年、2015年は全く成長していません。重要な点ですが、ゼロ成長の下で失業率は低下が続き、多くの業界で人手不足が深刻化しています。つまり、需要不足が原因ではなく、供給制約で経済の天井が低くなっていることが、低成長の原因なのです。最近、改めて潜在成長率を推計しましたが、やはりゼロまで低下していました。このことは幾ら財政や金融政策を噴かしても効果は一時的で、副作用ばかりが大きくなるということです。3年前に予想した通り、「不可」です。



加藤出(88済:東短リサーチチーフエコノミスト)

毛利のお殿様は3本まとまれば矢は折れないと言ったわけですが、この3年間のアベノミクスはほぼ金融政策1本でやってきました。それが今折れかかっているのは必然といえます。安倍首相は強いリーダーシップを誇っていたわけですから、本来はサッチャーやシュレーダーのような痛みを招く構造改革を大胆に行えたはずです。しかし実際は衆院で3分の2の議席を取るための目先の景気回復重視に傾斜してしまいました。構造改革の痛みを金融緩和策で和らげるという組み合わせは望ましいのですが、日銀の超緩和策で国債をマイナス金利で発行できるようになったため、逆に今後政府債務が安易に膨張していく可能性が高まっている点が懸念されます。


熊野英生(H2済:第一生命経済研究所主席エコノミスト)

日本経済の成長期待は、安倍政権が登場した2012年末に、成長戦略を含んだ「三本の矢」によって高まった。ここは評価できる。しかし、その後、改革熱は色褪せるばかりだ。岩盤規制を壊すと語っていたのに、ほとんど何も変わっていない。一時的な円安で見かけ上、企業収益が厚みを増したが、輸出数量、生産指数、設備投資はいずれも伸び悩んでいる。円安だけですべてを変革できない。風向きが変わったのは2014年後半辺りだ。安倍政権も、2014年末の衆議院選挙前後から経済以外の分野に関心が移ったようにも見える。経済政策への期待感は、リレーの途中で選手がバトンを落としたまま、それを拾おうとせずに時間が経過しているような、もどかしさを感じる。

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